Fusion360のプロパティ機能を使ってモデルの重心位置と慣性モーメントを求める方法について説明する
使用するFusion360のバージョンは2.0.10244
はじめに
Fusion360では,プロパティという機能を使うことで,モデルの体積や重量などの様々な情報を簡単に取得することができる
どれも手計算で求めるには厳しいので非常にありがたい
今回は,鳥人間コンテストに出場する滑空機「QX-20」において,実際に製作した機体の重量をもとに,重心位置や慣性モーメントを求めてみる
以下に示すのがQX-20の3Dモデルで,機体は左右の主翼,カウル,胴体,水平尾翼,垂直尾翼に分かれていてる
また,座標系は教科書に倣って機体前方にx軸,右翼側にy軸,機体下向きにz軸をとっている
実際に製作した機体の重量は,主翼:28.230 [kg],水平尾翼:1.220 [kg],垂直尾翼:1.645 [kg],胴体 3.557 [kg],カウル+パイロット他:63.962 [kg] だった
↓Fusion360のインストールはこちら
プロパティ取得の手順の解説
Fusion360のプロパティで慣性モーメントを求めるには以下の手順で行う
- 作成した3Dモデルの各部品の体積を求める
- 部品ごとにマテリアルを作成する
- 作成したマテリアルを適用する
- 全体のプロパティを求める
それでは一つずつ説明していく
作成した3Dモデルの各部品の体積を求める
まず,3Dモデルにおける主翼の体積を求めるために,右翼と左翼のボディを選択して右クリックし,Propertiesをクリックする
プロパティウィンドウが開き,Copy to Clipbordをクリックすると選択したボディの情報を取得できる
Bodies (2)
Area 3.635E+07 mm^2
Density 5.000E-05 g / mm^3
Mass 59543.115 g
Volume 1.191E+09 mm^3
Physical Material Polystyrene, Expanded
Appearance Polystyrene
モデル内の主翼の体積が1.191E+09 [mm^3]であることがわかったので,3Dモデル内の主翼の重量を実際の値 28.230 [kg] と同じになるようにするために,このモデルにおける主翼の密度[g/cm^3]を以下のように設定する
\begin{eqnarray}
\frac{28.230 [kg] \times 10^{3} \mathrm{[g/kg]}}{1.191\times 10^{-9} \mathrm{[mm^{3}]} \times 10^{-3} \mathrm{[cm^{3}/mm^{3}]}}=0.024 \mathrm{[g/cm{^3}]} \\
\end{eqnarray}
部品ごとにマテリアルを作成する
MODITY>Mange Materialをクリックする
Matrial Browserが開くので,適当なマテリアルの右にある鉛筆と上矢印のアイコンをクリックする
マテリアルがFaboritesに追加されるので,右クリック>Renameでわかりやすい名前に変更する(ここではWingMaterialとした)
右側のタブのPysical>Mechanical>Densityに先ほど計算した密度を入力してApplyをクリックする
作成したマテリアルを適用する
今の2つの手順をすべての部品について繰り返す
MODIFY>Physical Materialをクリックする
Phisical Materialウィンドウが開くので,LibraryからFavoritesを選択する
上で作成したマテリアルをそれぞれのボディにドラッグ&ドロップする
全体のプロパティを求める
ブラウザの一番上のプロジェクト名を右クリックし,Propertiesをクリックする
プロパティウィンドウが開くので,右上の書類のアイコンをクリックすることで,機体全体の情報が取得できる
General
Part Number QX-20_Property
Part Name QX-20_Property v2
Description
Material Name (Various)
Manage
Item Number
Lifecycle
Revision
State
Change Order
Physical
Mass 98918.213 g
Volume 2.057E+09 mm^3
Density 4.810E-05 g / mm^3
Area 4.896E+07 mm^2
World X,Y,Z 0.00 mm, 0.00 mm, 0.00 mm
Center of Mass -185.421 mm, -0.01 mm, -239.915 mm
Bounding Box
Length 5306.851 mm
Width 26394.721 mm
Height 2144.488 mm
Moment of Inertia at Center of Mass (g mm^2)
Ixx 1.129E+12
Ixy -2.718E+06
Ixz -7.875E+09
Iyx -2.718E+06
Iyy 7.780E+10
Iyz 1.632E+05
Izx -7.875E+09
Izy 1.632E+05
Izz 1.186E+12
Moment of Inertia at Origin (g mm^2)
Ixx 1.134E+12
Ixy -2.899E+06
Ixz -1.228E+10
Iyx -2.899E+06
Iyy 8.689E+10
Iyz -71000.22
Izx -1.228E+10
Izy -71000.22
Izz 1.190E+12
マテリアルの密度指定の際の有効数字の影響でモデル内の機体重量と実際の値に若干のずれが生じているが,z方向の重心位置は-0.234 [m],原点まわりの慣性モーメントはIxx = 1134 [kg m^2],Iyy = 87 [kg m^2],Izz = 1190 [kg m^2],Ixz = -12.280 [kg m^2]となる
ちなみに,エクセルで作った設計シート(≫重量推算②)で計算したz方向の重心位置は-0.290 [m],重心まわりの慣性モーメントはIxx = 1004 [kg m^2],Iyy = 58 [kg m^2],Izz = 1044 [kg m^2],Ixz = -6.585 [kg m^2]である
どちらがより正解に近いのかはわからないが,どちらも似たような値になっていることがわかる
さらにここから主慣性モーメントと慣性主軸を求めるやり方についてはこちらを参照
おわりに
Fusion360を使って航空機の3Dモデルの重心位置と慣性モーメントを求めることができた
文明の利器のすばらしさを実感する
↓CADみたいなポンチ絵を描けるようになるための本
投影図法や機械を描くテクニックを学ぶことができる
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