ヘリコプターの航空力学を勉強するときに役立つ参考書について紹介する
上から順に読んでいくといいと思う
ようこそヘリコプターの世界へ
SNSで評判の1冊
めったに手に入らない
他の本と比べて,具体的な操縦方法や設計開発の流れなどに重点が置いてある
数式などを極力使わずに説明されているので,最初の1冊に最適
ときたま楽天市場やAmazonに中古が1冊だけ出てきたりする
幸運にもどこかで見かけたら脊髄反射でポチることをお勧めする
航空工学講座⑪
有名な青い表紙のシリーズの1冊
表紙にあるように,BK117など既存の機体の構造図などがたくさん書いてあって分かりやすい
ほどよく数式も登場し,ヘリコプターの推力などが簡易的に計算できるようになる
空力だけでなく,構造,エンジン,アビオニクスなど,ヘリコプター全体について幅広い知識を得ることができる
難易度的にも,このレベルまで理解できればとりあえずは満足できる良書
とりあえずこれを買っておけば間違いない
図解ヘリコプタ入門
タイトル通りとにかく図解によって説明がされている本
ぱっと見の印象は絵本に近いが,内容の難易度的には「ようこそヘリコプターの世界へ」と「航空工学講座⑪」の中間くらい
文字だけではどうしても理解が難しいスワッシュプレート周りやヒンジ周りの複雑な構造を勉強する際に非常に役に立つ
航空力学講座⑪を読んでもイマイチ機構の動き方が理解できなかったら購入をお勧めする
※この文献のみローターの回転方向が上から見て時計回りなので注意
ヘリコプターの工学と操縦
ヘリコプターの操縦について学ぶなら間違いなくこれ
離陸/着陸,ホバリング,上昇/下降,水平飛行/旋回,加速/減速などを行う際のヘリコプターの各舵の操作方法が事細かに説明されている
「ヘリコプターを操縦するときにはどの舵をどのように操作すればいいのか」はヘリコプターの空力とも密接に関連しているので,ヘリコプターの空力を一通り勉強した後に読めば自分の理解度チェックも行うことができる
また,パイロットが理解するべき空力/構造の知識もわかりやすく簡潔にまとめられているので,概要をざっと復習するのにも最適な本
ヘリコプタ入門
加藤寛一郎(カトカン)が書いたタイトル詐欺本の名著「航空機力学入門」の姉妹本
上の文献でさっくり文章だけで説明されていたヘリコプタの特性を,ローターの運動方程式からゴリゴリ導き出していく
ヘリコプタの空力設計やシミュレーターを作るときには参考になるが,カトカン独特の癖(話があっちこっちに飛んで迷子になる)があるので人を選ぶ
個人的にはこの本よりも次に紹介する2冊の方がおすすめ
筆者流のカトカン本の読み方は以下の通り
- 数式はすべて読み飛ばす
- 節の最後の「この式から~~ということが分かる」という文だけ読んで,興味があったら式をちらっと見てみる
- 2~3時間で読みきるつもりでとにかく読み進める
- どこに何が書いてあるかを把握して,その後の作業で必要になった時だけ適宜参考にする
最初のページから意気揚々と数式の導出を追っていてはいつまでたっても読み終わらないし心が折れて睡魔に襲われる
自分がやりたいことに必要ない記述の方が多いので,辞書的に参照するのがいい
Bramwell's Helicopter Dynamics
上の3冊の空力の参考図書として挙げられている本
結局英語の教科書が一番丁寧で網羅的でわかりやすい(そして鈍器)
英語で書いてあることを除けば,内容の広さ,深さ,わかりやすさは上に紹介した本の中でもダントツ
日本語の本を読んでヘリコプターの空力の知識をある程度蓄えたらなんとなく内容は理解できるので,ぜひ挑戦してみてほしい
これを読めばヘリコプターの航空力学(力のつり合い,推力などの計算式,安定性)が数式を用いて定量的に一通り理解できる
ちなみに,適切にググれば400ページくらいあるPDFが無料でダウンロードできる
Helicopter Performance, Stability, and Control
沼の底
ただいま鋭意読解中
Bramwell本をもってしても手の届かなかったところに到達できる本
ページ数がBramwell本の倍くらいある
フライトシミュレーターを作成するための空力微係数のリストとその導出が載っていたり,ヘリコプターの基本設計を行うための手順や諸元の決め方なども書いてある
一発目に読むとあまりの分量と内容で心が粉々に粉砕されるので,Bramwell本を踏み台にして読むのがおすすめ
こいつもググれば800ページくらいあるPDFが無料でダウンロードできる
Helicopter Flying Handbook: FAA-H-8083-21B (English Edition)
FAAが出しているパイロットのためのヘリコプターハンドブック
ヘリコプターについての幅広い知識がカラー付きのイラストで分かりやすく説明されている
学術書ではなく実用的なハンドブックなので,理論と実際の橋渡しに最適
理論を一通り学び終えた後に読んでみると非常に面白い
こいつもググれば200ページくらいあるPDFが無料でダウンロードできる.英語最強.
機械仕掛けの神
少し趣向を変えてヘリコプターの開発の歴史について
前半はヘリコプターが今の形になるまでの数多の天才たちの苦労の話
ヘリコプターについて勉強すればするほど「こんな複雑なものどこの誰が思いついたんだ」となってくるが,それが解消される
後半は「夢の乗り物」として注目を集めていたヘリコプターが実際にどのように使われ,なぜ広く普及しなかったかの話
この本を読むと,第二次世界大戦戦後に過度の期待を寄せられたヘリコプターの姿が,いま流行りの空飛ぶクルマに重なってみえる
歴史は繰り返すのか,果たして
固定翼機の参考文献
ヘリコプターについて理解するためには,固定翼機の知識が大いに助けになる
固定翼機の方が参考書も多いので,いきなりヘリコプターに挑む前に固定翼機について勉強することをお勧めする
紙ヒコーキで知る飛行の原理ー身近に学ぶ航空力学
いろいろ読んできた本の中で,一番初心者にとってわかりやすいと思う
文庫本サイズで入手性が高く,説明の仕方も丁寧でわかりやすいのに航空機の設計に必要な事項はもれなく解説されている完璧な一冊
とりあえずこれを買っておけば間違いない
飛行機の構造設計ーその理論とメカニズム
実際の航空機の構造について紹介している本
航空工学講座⑪の第10章と第11章を読んで物足りなかった人におすすめ
題材は固定翼機だが,本質的には変わらない
航空機力学入門
上で紹介したカトカン本の本家
通称”白本”
固定翼機の機体の安定微係数の計算方法が詳しく書いてある
航空機の"安定性"や"運動性"を理解するためには避けては通れない一冊
航空機の飛行力学と制御
「機体の安定微係数も計算できたし,さて,フライトシミュレーターでも作るか!」となったときに読むといい本.通称”青本”
安定微係数はすでに計算できている前提で,おもに線形解析の方法について書いてある.予備知識として制御工学を学んでおくと読みやすい
おわりに
ヘリコプターの航空力学の勉強に使った参考書を紹介した
これまで飛行機の空力についてはそれなりに勉強してきたが,ヘリコプターは飛行機よりも1段階レベルが上がっているように思う(楽しい)
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