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もしも鳥人間が岩崎夏海の「もしドラ」を読んだら

鳥人間コンテスト出場経験がある筆者が「もしドラ」を読んだら、「もうこれ鳥人間じゃん」ってこぼすくらいには感動したので、ネタバレしない程度におすすめポイントを紹介する

今まで先輩たちの姿を見ながらなんとなく身に着けてきた「マネジメント」について、体系的に学び直す最高の教材だと思う

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あらすじ

 

累計270万部の大ベストセラー! 敏腕マネージャーと野球部の仲間が甲子園を目指して奮闘する青春小説。高校野球の女子マネージャーのみなみちゃんは、マネージャーの仕事のためにドラッカーの『マネジメント』を間違って買ってしまいます。はじめは難しくて後悔するのですが、しだいに野球部のマネジメントにも生かせることに気付きます。これまでのドラッカー読者だけでなく、学生から若手ビジネスパーソンなど多くの人に読んでほしい一冊。

 

今回の記事では本編の中から特に鳥人間味の強いと感じた部分を引用して紹介するが、本当は全編引用したいくらいにはためになって面白かった

この記事の引用中の太字は筆者によるものである

それではいってみよう

 

プロローグ

 

マネージャーになったみなみには、一つの目標があった。それは、「野球部を甲子園に連れていく」ということだった。彼女はそのためにマネージャーになったのだ。

それは夢などというあやふやなものではなかった。願望ですらなかった。明確な目標だった。使命だった。みなみは、野球部を甲子園に連れて「いきたい」とは考えていなかった。連れて「いく」と決めたのだ。

しかし、そう決めたはいいものの、どうしたらそれを実現できるか、具体的なアイデアがあるわけではなかった。前述したように、これまで野球部とは無縁の生活を送ってきた。だから、野球部はおろか、マネージャーのこともよく分かっていなかったのだ。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.9

\もうこれ鳥人間じゃん/

1年生で先輩たちのフライトを見てあこがれて、「自分も絶対にかっこいい飛行機を作ってやる!」って意気込むものの、大学に入るまでは飛行機作りとは無縁の生活を送ってきて、気づけば執行代になり、マネジメントのこともよくわからんままチームを率いることになる

 

第一章

みなみは『マネジメント』と出会った

 

みなみがマネージャーになったのは、夏の都予選に負けて三年生が引退した直後だった。だからというのもあったが、この時期の練習にはほとんどの部員が参加していなかった。

別に休みというわけではなかった。練習はちゃんと行われていた。それにもかかわらず、多くの部員がほとんどなんの理由もなしに、またなんの報告もなしで、練習をサボっていたのである。

この頃の野球部には、そういう雰囲気があった。出るのも休むのも全くの自由。自由というと聞こえはいいが、単に規律がないだけであった。いくら休もうと、いくらサボろうと、なんのおとがめもなしだったのである。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.12

\もうこれ鳥人間じゃん/

大会が終わってコンセプト会議をしたはいいものの、なんだかんだで夏休みは旅行とか帰省とか院試とかインターンとかで作業の集まりが悪かったりするよね

 

「ん.....まだ分からないんだけどね。でね、これに書いてあったんだけど、マネジメントーマネジメントというのはマネジャーの仕事ねーをするためには、まず初めに、「組織の定義づけ」から始めなければならないんだって」

「組織の定義づけ?」

「そう。『マネジメント』には、こうあるわ」

あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可分である。(二二頁)

つまり野球部をマネジメントするためには、まず野球部はどういう組織で、何をするべきかーを決めなければならないのよ

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.29

\もうこれ鳥人間じゃん/

ガチで勝ちに行くのか、飛行機作りを楽しむのか、ロマンを追い求めるのか、そのチームが「何を目指すチームなのか」を決めるのが一番大事だと思う

 

第二章

みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ

 

「野球部の『顧客』って誰なのかな?」

「え?」

「私、それが分からなくて、ずっと困ってたんだ。この本にはさ、『企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される』って書いてあるんだけど、これは顧客が誰で、どんな人であるかによって、野球部が何であって、何をすべきかが決まってくるってことだよね?そこまでは分かったんだけど、肝心の『顧客』っていうのが誰なのかが、さっぱり分からなかったんだよね」

「ふむ」と、その質問を受けて、正義も真剣な表情になった。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.54

\もうこれ鳥人間じゃん/

まず第一に顧客を設定して、顧客の要求事項を実現するために必要な飛行機のコンセプトを決めるのが概念設計のプロセスである

 

「それから、忘れちゃいけないのは、ぼくたち『野球部員」も顧客だということだな」

「え?」とみなみは、驚いた顔で正義のことを見た。「どういうこと?」

「だってそうだろ」。正義は、当たり前のことを言うような顔で言った。

「ぼくたち部員がいなければ、野球部なんて成り立たないわけだから。それに高校球児が一人もいなくなれば、甲子園大会だって成り立たない。だから、ぼくたち部員というのは、野球部の従業員であると同時に、一番の顧客でもあるわけだ

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.58

\もうこれ鳥人間じゃん/

というかQX-20の設計資料に書いたやつじゃん

 

第三章

みなみはマーケティングに取り組んだ

 

それは「専門家」という言葉で説明されていた。

『マネジメント』にはこうあった。

専門家にはマネジャーが必要である。自ら知識と能力を全体の成果に結びつけることこそ、専門家にとって最大の問題である。専門家にとってはコミュニケーションが問題である。自らのアウトプットが他の者のインプットにならないかぎり、成果はあがらない。専門家のアウトプットとは知識であり情報である。彼ら専門家のアウトプットを使うべき者が、彼らの言おうとしていること、行おうとしていることを理解しなければならない。

専門家は専門用語を使いがちである。専門用語なしでは話せない。ところが、彼らは理解してもらってこそ初めて有効な存在となる。彼らは自らの顧客たる組織内の同僚が必要とするものを供給しなければならない。このことを専門家に認識させることがマネジャーの仕事である。

組織の目標を専門家の用語に翻訳してやり、逆に専門家のアウトプットをその顧客の言葉に翻訳してやることもマネジャーの仕事である。(一二五頁)

この一節を初めて読んだ時、みなみは、そこに出てくる「専門家」という人物が加地とそっくりなことにびっくりさせられた。あまりにも似すぎているため、「これは加地のことを書いたのではないか?」と疑ったくらいだ。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.98

\もうこれ鳥人間じゃん/

これはもう鳥人間というか工学部あるあるですらある

 

第四章

みなみは専門家の通訳になろうとした

 

人間というものは、親しい友人以外は、ややこしくて、面倒で、じゃまなものだと思っていた。
しかし、『マネジメント』にはこうあった。

「人は最大の資産である」(七九頁)

資産!

その考えに、みなみは興奮させられた。これまで、人をそんなふうにとらえたことはなかった。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.128

\もうこれ鳥人間じゃん/

部員は資産

異論は認めない

死ぬ気で新入生をかき集め、丁寧に教育し、定着させ、育て上げることで強靭なチームが完成する

 

第五章

みなみは人の強みを生かそうとした

 

『マネジメント』には、仕事を生産的なものにする方法が詳しく説明されていた。

仕事を生産的なものにするには、四つのものが必要である。すなわち、
①分析である。仕事に必要な作業と手順と条件を知らなければならない。
②総合である。作業を集めプロセスとして編成しなければならない。
③管理である。仕事のプロセスのなかに、方向づけ、質と量、基準と例外についての管理手段を組み込まなければならない。
④道具である。(六二頁)

これに従って、みなみと文乃、そして加地は、チーム制練習の改善に取り組んでいった。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.140

\もうこれ鳥人間じゃん/

OBとして琵琶湖に行くたびに、機体の進化に驚かされ続けている

既存の作業を徹底的に分析して、ひたすらに改善を積み重ねてきたことで、現在の鳥コンは一昔前とは比べ物にならないほどのレベルに到達している

 

『マネジメント』には、こうあった。

自らや作業者集団の職務の設計に責任を持たせることが成功するのは、彼らが唯一の専門家である分野において、彼らの知識と経験が生かされるからである。(七五頁)

この言葉に従って、みなみは、部員一人ひとりの知識と経験を、それぞれの専門分野で生かそうとしたのである。

これは、「人を生かす」ことの一環でもあった。部員たちは、自らの強みが生かされることによって、その役割に対する責任感をますます強めた。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.145

\もうこれ鳥人間じゃん/

いろいろな学部のいろいろな特技を持った人材が集まることによって、1人じゃたどり着けないところまで行くことができる

鳥人間って楽しいよね

 

しかも、イノベーションが変えるのは「野球部」ではなかった。野球部を取り巻く、「高校野球界」の方だった。
「マネジメント』にはこうあった。

イノベーションとは、科学や技術そのものではなく価値である。組織のなかではなく、組織の外にもたらす変化である。イノベーションの尺度は、外の世界への影響である。(二六六〜二六七頁)

イノベーションは、組織の外、つまり野球部ではなく、野球部を取り巻く「高校野球界」にもたらす変化だった。古い常識を打ち壊し、新しい野球を創造することによって、高校野球界の常識を変えていくということだった。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.150

\もうこれ鳥人間じゃん/

「飛べば官軍」の鳥人間界隈は、比較的イノベーションが起こしやすいのかもしれない

自分たちが作った機体で結果を出して、鳥人間界隈全体に影響を与える、そんな機体が作れればまさにイノベーションだと思う

 

第六章

みなみはイノベーションに取り組んだ

 

またそこには、もう一つの目論見もあった。それは、野球部にチーム型の「トップマネジメント」を確立したいということだった。『マネジメント』にはこうあった。

トップマネジメントがチームとして機能するには、いくつかの厳しい条件を満たさなければならない。チームは単純ではない。仲のよさだけではうまく機能しない。人間関係に関わりなく、トップマネジメント・チームは機能しなければならない。
①トップマネジメントのメンバーはいそれぞれの担当分野において最終的な決定権を持たなければならない。
②トップマネジメントのメンバーは、自らの担当以外の分野について意思決定を行ってはならない。ただちに担当のメンバーに回さなければならない。
③トップマネジメントのメンバーは、仲良くする必要はない。尊敬し合う必要もない。ただし、攻撃し合ってはならない。会議室の外で、互いのことをとやかく言ったり、批判したり、けなしたりしてはならない。ほめあうことさえしないほうがよい。
④トップマネジメントは委員会ではない。チームである。チームにはキャプテンがいる。キャプテンは、ボスではなくリーダーである。キャプテンの役割の重さは多様である。(二二八頁)

これに従って、みなみは、自分の担当以外の分野については、その意思決定を行わないようにしたのである。他のメンバーが担当することについては、最終決定権を彼らに持たせたのだ。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら p.184

\もうこれ鳥人間じゃん/

現在の鳥人間コンテストの学生チームは製作部位ごとに班に分かれて活動することが多い

「トップマネジメント」は、班に分かれて機体を製作する学生チームの縦割り運営における最終目標の一つだと思う

 

おわりに

こんな感じで本編は第8章まで続いていく

ここで紹介したような「マネジメント」を経て、野球部がどのように変わり、どんな結末を迎えたのかはぜひ本編を読んで確かめてみてほしい

今回は本編の中でも特に鳥人間味が強い部分のみを抜粋したが、これら以外にも鳥人間のチーム運営に参考になるようなエッセンスが大量に詰まっている

最初は微妙だった高校の野球部が、マネジメントを経てどのように変わっていくのかというストーリーも単純に面白いし、難しいマネジメントの概念もケーススタディとともに分かりやすくかみ砕かれてストリートなっているので、数時間でサクッと読むことができる

これからチームのマネジメントをする段階で読んでもいいし、マネジメントした後に読むと「あ~あるある」となって楽しめるので、鳥人間界隈の人に是非お勧めしたい

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