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水面付近の風速勾配を用いるダイナミックソアリング

面付近の連続的な風速勾配を用いるアホウドリのダイナミックソアリングについて説明する。

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はじめに

前の記事「強風帯と弱風帯を用いるダイナミックソアリング」では、強風帯と弱風帯を厚さゼロの境界で分けたRayleigh型モデルを用いて、ダイナミックソアリングの基本的なエネルギー交換を整理した。

強風帯と弱風帯を用いるダイナミックソアリング
強風帯と弱風帯を用いるRayleigh型のダイナミックソアリングについて説明する。

そこで次に、水面付近の連続的な風速勾配を用いるアホウドリのダイナミックソアリングを考える。

参考文献

Rayleighは1889年、高度とともに風速が増加することを利用するには、風上へ上昇し、風下へ下降する必要があると述べ、風速の鉛直差をアホウドリの無動力飛行へ結びつけている。

Rayleigh 1889

Sachsは、現実的なアホウドリの飛行力学モデルを用いてenergy-neutral trajectoryを最適化し、ダイナミックソアリングに必要な最小風速勾配を検討している。

また、飛行中のenergy gainを地面固定慣性座標系から見た速度を用いて評価しており、本記事の記号では主として対地エネルギー \(E_g\) の変化に対応する。

Sachs 2005

その後、Sachsらは高精度GPSを用いてワタリアホウドリの小スケール運動を計測し、風上上昇、上側の旋回、風下降下、下側の旋回からなる反復パターンを実飛行で確認した。

この研究で用いられるtotal energyも、地面固定慣性座標系に対する速度を用いた運動エネルギーと位置エネルギーの和であり、本記事の対地エネルギー \(E_g\) に対応する。

Sachs et al. 2013

Bousquetらは、従来の180度旋回をつなぐRayleigh型の説明を最適化問題として再検討し、薄い風速勾配では、小さい旋回角の大半径円弧を連続させ、平均的に横風方向へ進むtravelling trajectoryが効率的になり得ることを示している。

Bousquet et al. 2017

Taylorらは、移動する大気中の飛行について、対気速度を用いた運動エネルギーと位置エネルギーを含む機械的エネルギー収支を一般的に整理している。

本記事で対気エネルギー \(E_a\) を用いて風速勾配によるエネルギー交換を整理する際の位置づけと対応する。

Taylor et al. 2016

定式化

Rayleigh型サイクルでは、風速差を厚さゼロの境界へ集中させたため、対気エネルギーの変化は境界横断時に跳躍的に現れた。

実際の海面付近では風速は高度に対して連続的に変化するため、アホウドリが飛行中に遭遇する風速も連続的に変化する。

海面摩擦の影響によって平均水平風速が低下し、一般に高度とともに風速が増加する基礎モデルとして、

\begin{align} \mathbf W =U(h)\mathbf e_x, \qquad \frac{dU}{dh}>0 \end{align}

を考える。

アホウドリは、概ね次の運動を繰り返す。

  • 風上成分を持って上昇する。
  • 上空で風下側へ向きを変える。
  • 風下成分を持って降下する。
  • 海面近くで再び風上側へ向きを変える。

この運動では、Rayleigh型サイクルの二回の境界横断に対応するエネルギー交換が、有限の風速勾配の中で連続的に生じる。

対気エネルギー基準では、風上上昇と風下降下の両方で、風速勾配による対気エネルギー獲得項が正になる。

一方、飛行中には抗力によって対気エネルギーが失われる。

energy-neutral trajectoryでは、一周期にわたる風速勾配からの対気エネルギー獲得量と抗力損失量が釣り合い、一周期後の対気エネルギーが初期値へ戻る。

対地エネルギー基準では、風上上昇および風上から風下への方向転換にかけて対地エネルギーが増加し、特に風速の大きい上空で風下方向の速度成分を増加させることで、風から大きな正の仕事を受ける。

一方、海面近くの弱風域で風下から風上へ向きを戻す区間では風から負の仕事を受ける。

また、travelling型のダイナミックソアリングでは、平均的に横風方向へ進む対気運動に風下方向の移流が加わるため、地上航跡は横風方向へ進みながら風下方向にも移動することがある。

対気エネルギーによる説明

水平風が高度とともに強くなる場合について、

  • 風は定常である。
  • 風向は一定である。
  • 水平風速は高度だけの関数である。
  • 風速ベクトルは水平成分のみを持つ。

とする。

したがって、

\begin{align} \mathbf W =U(h)\mathbf e_x, \qquad \frac{dU}{dh}>0, \qquad W_z=0 \end{align}

である。

定常かつ水平方向に一様なので、航空機が遭遇する風速変化は、

\begin{align} \frac{d\mathbf W}{dt} &=\left( \mathbf V_g\cdot\nabla \right) \mathbf W \\ &=\frac{dU}{dh} \dot h\, \mathbf e_x \end{align}

となる。

これを対気エネルギー高度の一般式へ代入すると、

\begin{align} \dot H_a &=-\frac{DV_a}{mg} -\frac{\mathbf V_a}{g} \cdot \frac{d\mathbf W}{dt} \\ &=-\frac{DV_a}{mg} -\frac{V_{a,x}}{g} \frac{dU}{dh} \dot h \end{align}

となる。

風上上昇では、

\begin{align} V_{a,x}<0, \qquad \dot h>0 \end{align}

なので、

\begin{align} -\frac{V_{a,x}}{g} \frac{dU}{dh} \dot h > 0 \end{align}

となる。

風下降下では、

\begin{align} V_{a,x}>0, \qquad \dot h<0 \end{align}

なので、やはり、

\begin{align} -\frac{V_{a,x}}{g} \frac{dU}{dh} \dot h > 0 \end{align}

となる。

したがって、風上上昇と風下降下の両方で、風速勾配による対気エネルギー獲得項は正である。

一周期の対気エネルギー収支は、

\begin{align} \Delta E_{a,\mathrm{cycle}} ={}&-\int_{\mathrm{cycle}}DV_a\,dt -m\int_{\mathrm{cycle}} V_{a,x} \frac{dU}{dh} \dot h\,dt \end{align}

と書くことができる。

対気エネルギーの獲得量と抗力による損失量が釣り合い、

\begin{align} \Delta E_{a,\mathrm{cycle}}=0 \end{align}

となれば、一周期後の対気エネルギーは初期値へ戻り、ダイナミックソアリングを周期的に継続できる。

対地エネルギーによる説明

次に、同じ連続風速勾配中のダイナミックソアリングを対地エネルギー基準から見る。

鉛直風がなく、

\begin{align} \mathbf W =U(h)\mathbf e_x \end{align}

であるため、対地エネルギーの一般式、

\begin{align} \dot E_g =-DV_a +mgW_z +m\mathbf W\cdot\dot{\mathbf V}_g \end{align}

は、

\begin{align} \dot E_g =-DV_a +mU(h)\dot V_{g,x} \end{align}

となる。

この式では、

\begin{align} mU(h)\dot V_{g,x} \end{align}

が、移動する空気が航空機へ行う動的な仕事率を表す。

風上から風下へ向きを変える区間では、風下方向の対地速度成分が増加するため、

\begin{align} \dot V_{g,x}>0 \end{align}

となる部分で風から受ける仕事は正になる。

さらに、高高度ほど \(U(h)\) が大きいため、同程度の風下方向加速度であっても、上空の強風域で風から受ける正の仕事は大きくなる。

一方、海面近くで風下から風上へ向きを戻す区間では、

\begin{align} \dot V_{g,x}<0 \end{align}

となり、風から受ける仕事は負になる。

ただし、低高度では \(U(h)\) が小さいため、その絶対値を小さくできる。

一周期について積分すると、

\begin{align} \Delta E_{g,\mathrm{cycle}} ={}&-\int_{\mathrm{cycle}}DV_a\,dt +m\int_{\mathrm{cycle}} U(h)\dot V_{g,x}\,dt \end{align}

となる。

したがって、連続風速勾配を用いるダイナミックソアリングでも、風速の大きい上空で風から受ける正の仕事と、風速の小さい低空で風から受ける負の仕事を非対称にし、その風から受ける正味の仕事で抗力損失を補うことが基本となる。

おわりに

水面付近の連続的な風速勾配では、航空機が飛行軌道に沿って遭遇する風速変化は、

\begin{align} \frac{d\mathbf W}{dt} =\frac{dU}{dh} \dot h\,\mathbf e_x \end{align}

と表される。

対気エネルギー基準では、風上成分を持って上昇する区間と、風下成分を持って降下する区間の両方で、風速勾配による対気エネルギー獲得項が正になる。その獲得量が一周期の抗力損失を補えば、energy-neutral trajectoryとして周期運動を継続できる。

対地エネルギー基準では、風速の大きい上空で風下方向の速度成分を増加させることで大きな正の仕事を受け、風速の小さい低空で風上方向へ戻ることで負の仕事を小さくする。この正負の仕事の非対称性が、一周期の正味のエネルギー獲得につながる。

Rayleigh型サイクルでは境界横断時に跳躍として現れたエネルギー交換が、連続風速勾配では飛行中に連続して生じる。二つのモデルは、風速の異なる領域を適切な飛行方向で利用し、風から受ける正味の仕事によって抗力損失を補うという同じ仕組みを表している。

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強風帯と弱風帯を用いるダイナミックソアリング
強風帯と弱風帯を用いるRayleigh型のダイナミックソアリングについて説明する。
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