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航空機用エンジンの分類と説明

航空機用エンジンの分類方法とそれぞれの違いについて説明する

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はじめに

航空機に使用されるエンジンには以下の5つがある

  1. レシプロエンジン
  2. ターボジェットエンジン
  3. ターボプロップエンジン
  4. ターボファンエンジン
  5. ターボシャフトエンジン

これら5つのエンジンの特徴をまとめると以下のようになる

名称動力機構推進力源速度域使用機体代表的な機種
レシプロエンジン
(ピストンエンジン)
ピストンの往復運動プロペラの回転低亜音速小型プロペラ機/
小型ヘリコプター
KAL-1KAT-1KAL-2FA-200FA-300 /
Bell 47
ターボジェットエンジン軸流式タービンの回転ジェット噴流超音速ジェット機/
小型標的機
T-1 /
J/AQM-1,J/AQM-2
ターボプロップエンジン軸流式タービンの回転プロペラの回転(75~90%)
ジェット噴流(10~25%)
低亜音速プロペラ機T-5T-7US-2 /
MU-2YS-11
ターボファンエンジン軸流式タービンの回転ファンの回転(50~90%)
ジェット噴流(10~50%)
亜音速~超音速ジェット機C-1F-2T-4P-1C-2 /
MU-300HondaJetMRJ
ターボシャフトエンジン軸流式タービンの回転シャフトの回転低亜音速ヘリコプターMH2000OH-1UH-2 /
BK117

この記事では、上記5つのエンジンの違いと分類方法について説明する

エンジンの構造や原理を学ぶには動画が一番わかりやすいので,この記事の随所に貼られているYoutubeの関連動画も参考にしてほしい

↓それぞれのエンジンの構造をまとめた神動画

それではいってみよう

航空機用エンジンの分類

エンジンは、コンプレッサーによって空気を圧縮し、燃料を混合し、点火し、排出する、というサイクルを繰り返すことによって、高いエネルギーを持った高温の燃焼ガスを生成することができる

航空機はこのようにして生成した高温の燃焼ガスのエネルギーを推力に変換することによって空を飛ぶことを可能にしている

航空機用のエンジンは、エンジンを構成する主たる動力機構の種類によってレシプロエンジン(ピストンエンジン)とガスタービンエンジン(ジェットエンジン)の2つに大別される

flowchart LR K[航空機用エンジン] -->I{動力機構が} I -->|ピストン機構| J[レシプロエンジン] I -->|軸流式タービン| A[ガスタービンエンジン]

さらに,ガスタービンエンジンは燃焼ガスのエネルギーを推力(thrust)に変換する方法によって,ターボジェットエンジン,ターボプロップエンジン,ターボファンエンジン,ターボシャフトエンジンの4つに分類される

flowchart LR A[ガスタービンエンジン] --> B{ジェット噴流を推力として} B -->|使う| C{ジェット噴流以外の推進力を} B ---->|使わない| D[ターボシャフトエンジン] C --->|使わない| F[ターボジェットエンジン] C -->|使う| E{回転させるのは} E -->|プロペラ| G[ターボプロップエンジン] E -->|ファン| H[ターボファンエンジン]

それではひとつずつ説明していく

レシプロエンジン(ピストンエンジン)

名称動力機構推進力源速度域使用機体代表的な機種
レシプロエンジン
(ピストンエンジン)
ピストンの往復運動プロペラの回転低亜音速小型プロペラ機/
小型ヘリコプター
KAL-1KAT-1KAL-2FA-200FA-300 /
Bell 47

flowchart LR subgraph E[ ] C -->|排出| A A[空気] -->|圧縮| B[燃料混合] B -->|点火| C[燃焼ガス] end E --> F[ピストン] F -->|往復運動| G[クランクシャフト] G -->|回転運動| H[プロペラ]

レシプロエンジンは燃焼ガスのエネルギーをピストンの往復運動に変換し,それをさらにクランクシャフトを用いて回転運動に変換する

クランクシャフトの回転をプロペラやローターのシャフトに伝達してプロペラやローターを回転させることで、推力を発生させることができる

歴史的にはもっとも古いが,構造が簡単で整備がしやすく安価なことから,現在でも小型の固定翼機やヘリコプターに使用されている

ターボジェットエンジン

名称動力機構推進力源速度域使用機体代表的な機種
ターボジェットエンジン軸流式タービンの回転ジェット噴流超音速ジェット機/
小型標的機
T-1 /
J/AQM-1,J/AQM-2

flowchart LR A[空気流入] --> B[コンプレッサー] B -->|圧縮| C[燃焼室] C -->|点火| D[燃焼ガス] D --> E[タービン] E --> F[ジェット噴流] E -.->|動力源| B

高温の燃焼ガスをそのままジェット噴流として後方に排出することで、燃焼ガスのエネルギーをジェット噴流に変換して推進力として利用するのがターボジェットエンジンである

タービンはコンプレッサーを駆動に必要なエネルギーを取り出すためだけに使用される

1930年代に実用化された最初のガスタービンエンジンで,ここから他の3つのガスタービンエンジンに派生していく

ターボジェットエンジンは小型で大きなパワーを得ることができる一方で,騒音が大きく,ジェット噴流の速度に対して機体速度が小さすぎる場合には性能が大きく悪化するため,主として超音速で飛行する機体に使用される

初期のジェット戦闘機などに使用されていたが,上位互換であるターボファンエンジンの登場によってほとんど使われなくなった

現在では空対空小型標的機などに使用されている

ターボプロップエンジン

名称動力機構推進力源速度域使用機体代表的な機種
ターボプロップエンジン軸流式タービンの回転プロペラの回転(75~90%)
ジェット噴流(10~25%)
低亜音速プロペラ機T-5T-7US-2 /
MU-2YS-11

flowchart LR A[空気流入] --> B[コンプレッサー] B -->|圧縮| C[燃焼室] C -->|点火| D[燃焼ガス] D --> E[タービン] E -->|減速機| G[プロペラ] E -.-> F[ジェット噴流] E -.->|動力源| B

ターボジェットエンジンの欠点である低速度域での性能悪化をカバーするために1940年代に実用化されたのがターボプロップエンジンである

燃焼ガスのエネルギーの大部分は減速機(トランスミッション)を介してプロペラに接続されたシャフト(ドライブシャフト)を回転させるために用いられ,残ったエネルギーはジェット噴流として後方に排出される

ターボプロップエンジンの推進力の大きさはプロペラの回転によって増速された空気噴流のエネルギーと高温の燃焼ガスとして排出されたジェット噴流のエネルギーの合計であり,比率としてはプロペラによる推進力が75~90%ほどを占める

ターボプロップエンジンは低速度域で高い性能を発揮するため,現在でもプロペラ機の多くで用いられている

ターボファンエンジン

名称動力機構推進力源使用機体代表的な機種
ターボファンエンジン軸流式タービンの回転ファンの回転(50~90%)
ジェット噴流(10~50%)
ジェット機C-1F-2T-4P-1C-2 /
MU-300HondaJetMRJ

flowchart LR A[空気流入] --> G[ファン] G -------> I[空気噴流] G --> B[コンプレッサー] B -->|圧縮| C[燃焼室] C -->|点火| D[燃焼ガス] D --> E[高圧タービン] E --> H[低圧タービン] H --> F[ジェット噴流] E -.->|動力源| B H -.->|動力源| G

ターボファンエンジンは先述したターボジェットエンジンとターボプロップエンジンの中間の性質を持ったガスタービンエンジンで,現在のほとんどすべてのジェット機に用いられている

ターボファンエンジンに流入した空気は,ファンの回転によって増速されて空気噴流として後方に排出されるものと,コアエンジンに流入してコンプレッサーにて圧縮されたのちに燃料と混合されて燃焼ガスになりジェット噴流として後方に排出されるものの2つに分けられる

ターボプロップエンジンとは違い,ターボファンエンジンのファンのドライブシャフトはコアエンジンのガスタービンのシャフトと共通のものである

ファンによって増速される空気流量とコアエンジン内で燃焼される空気流量の割合をバイパス比という

\begin{equation}
バイパス比=\frac{ファンによって増速される空気流量}{コアエンジン内で燃焼される空気流量}
\end{equation}

ターボファンエンジンの性質は,バイパス比が低いほどターボジェットエンジンに近いものになり,バイパス比が高いほどターボプロップエンジンに近いものになる

低バイパス比ターボファンエンジン

バイパス比が低い(1.0~2.0)ターボファンエンジンはターボジェットエンジンに近い性質を持つため,遷音速~超音速のジェット機(練習機や戦闘機)に用いられる

ターボファンエンジンはターボジェットエンジンと比較して低速域での性能が向上した一方で,超音速で飛行する場合には出力不足になることがある

そのため,後方から排出した空気噴流に再び燃料を混合して点火するアフターバーナーと呼ばれる出力調整機構が取り付けられたり,ほぼターボジェットエンジンのような超低バイパス比のターボファンエンジンなどが開発されたりした

https://ja.wikipedia.org/wiki/アフターバーナー
https://ja.wikipedia.org/wiki/プラット・アンド・ホイットニー F119

高バイパス比ターボファンエンジン

バイパス比が高い(4.0~)ターボファンエンジンはターボプロップエンジンに近い性質を持つため,亜音速のジェット機(輸送機や旅客機)に用いられる

バイパス比の向上は亜音速域でのターボファンエンジンの性能向上につながるため,よりバイパス比の高い(~9.0)ターボファンエンジンも開発されている

このような超高バイパス比のターボファンエンジンでは,ファンによる空気噴流とジェット噴流の流量比はターボプロップエンジンにおけるプロペラとジェット噴流のそれとほぼ同じになる

さらに,ファンとガスタービンエンジンで共通のシャフトを使用しながら,遊星歯車機構を用いることでファンの回転数を調節できるギヤードターボファンエンジンなるものも開発されている

ここまでくると超高バイパス比ターボファンエンジンなのかダクテッドファン付きのターボプロップエンジンなのかよく分からない

https://ja.wikipedia.org/wiki/ギヤードターボファンエンジン
https://ja.wikipedia.org/wiki/ダクテッドファン

ターボシャフトエンジン

名称動力機構推進力源使用機体代表的な機種
ターボシャフトエンジン軸流式タービンの回転シャフトの回転ヘリコプターMH2000OH-1UH-2 /
BK117

flowchart LR A[空気流入] --> B[コンプレッサー] B -->|圧縮| C[燃焼室] C -->|点火| D[燃焼ガス] D --> E[タービン] E -.->|動力源| B E -->G[シャフト] G -->|Freewheeling機構| H[トランスミッション] H --> I[メインローター] H --> J[テールローター]

これまでのガスタービンエンジンはジェット噴流を推進力として利用していた一方で,高温ガスの燃焼エネルギーをすべてシャフトの回転に変換するのがターボシャフトエンジンである

ターボシャフトエンジンはターボプロップエンジンと同様に1940年代に開発され,ヘリコプターのエンジンとして利用されている

ターボプロップエンジンではトランスミッションはエンジンの一部だったが,ターボシャフトエンジンでは専用のトランスミッション(メインギアボックス)がエンジンと接続され,エンジンの回転をメインローターやテールローターに伝達している

飛行中にエンジンが故障した場合でもメインローターの回転数を維持できるように,エンジンとメインギアボックスの接続部にFreewheeling機構が使用されているのも特徴である

https://ja.wikipedia.org/wiki/ワンウェイクラッチ

おわりに

航空機用エンジンの分類方法とそれぞれの違いについて説明した

航空用のエンジンには派生が多くそれぞれがいろいろな名称で呼ばれているので非常に混乱する

動画なりフローチャートなりを参考に頑張って理解してほしい

flowchart LR K[航空機用エンジン] -->I{動力機構が} I ------>|ピストン機構| J[レシプロエンジン] I -->|軸流式タービン| A A[ガスタービンエンジン] --> B{ジェット噴流を推力として} B -->|使う| C{ジェット噴流以外の推進力を} B ---->|使わない| D[ターボシャフトエンジン] C --->|使わない| F[ターボジェットエンジン] C -->|使う| E{回転させるのは} E -->|プロペラ| G[ターボプロップエンジン] E -->|ファン| H[ターボファンエンジン]
飛行力学
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